September 14, 2006

BSE



私やラ・フレッチャに関心を持ってくださる方に今特にお話ししたいのはBSEに関することです。

私なりにこの数週間調べ考えてみました。情報はWeb上の記述と本によるものです。報道機関ではこのところこの問題を取り上げているのをほとんど見ることが出来ません。新聞でいくつか短い記事を目にしただけでテレビではまるで問題は無かったかのように取り上げられなくなってしまいました。実際に自己責任で選択しなければいけないこの情報のほしいタイミングに報道がされていないというのは残念なことです。
EUはアメリカの牛肉を輸入していません、韓国でも輸入禁止の継続を決めました。しかし日本ではあとは自己責任でと輸入再開を決めてしまいました。
これはどういうことなのでしょうか、私のような料理人にとっては家族やお客さん従業員の方、一般家庭の主婦の方は子供や夫の健康を自分達の責任で考え守らなければいけないということです。健康を守ると書きましたがより正確にはそれは健康でなく命です。大袈裟ではなく、治療法、薬などは未だ開発されていない病気です、発症したら100%死に至ります。未だに感染のメカニズムも解明されていないし、異常プリオンタンパク質が原因と言われますが実はそれも実証されていません。
プリオン説でノーベル賞を受賞したプルシナーの研究成果にはなお多くの疑問点が指摘されています。
このような未知の脅威に私達は晒されています。
私達には優秀な科学者を雇うことはできませんし莫大な資金をかけた研究所を作ることもできません。
できるのは買わないこと食べないことだけです。

さてBSEとは何なのでしょう?

調べていて意外に感じたことは色々な発症例のあるそれぞれ種族差、地域差、発症の質自体の差も関わりなくそれが本質的に同じものだということです。
アメリカで狂牛病由来の変異型クロイツフェルトヤコブ病の発生が疑われ検証された際、アメリカ政府の見解それは変異型でなく孤発性のヤコブ病なので我国には未だBSE由来の変異型ヤコブ病の発生は認められないというものでした。でもその両者には本質的な差はありません。症状や発症する年齢などに若干の差はあっても孤発性のヤコブ病も伝染性を有していますし。色々な動物の伝達性スポンジ状脳症の脳をすりつぶして注射しマウスに感染させることは研究の場面で日常的に行われていることです。(弧発性のヤコブ病もこのような方法でマウスに感染させることができるそうです。)この病気にとって種の壁は低いということは明らかな事実です。
現在非常に確かなことにBSEがイギリスでアウトブレイクした最大の原因は肉骨粉を牛に与えたことです、レンダリングの方法(オイルショックの際変えられた過熱方法や石油由来の有機溶剤使用の有無)を変えなければあれほどの被害が出なかったのは確かでしょう、しかし肉骨粉が原因であることには間違いないわけです。理解に苦しむことに未だにアメリカでは肉骨粉を使用しています。鶏に肉骨粉を与えてその鶏の糞を飼料として牛に与えているそうです。
鶏の糞には相当の量の肉骨粉が未消化で残り含まれていて牛がそれを食べてしまうわけです、感染源の研究によって交差汚染ということが言われるほどこの病気の感染は多岐に可能性が考えられます。日本におけるBSEの感染は代用乳に含まれていた動物由来の油脂が原因として疑われているそうです。肉骨粉を締め出した状況でも実際に感染は発生するわけです。
アメリカではそれ以前の状況と言わざるを得ないでしょう。
このような例は論外として、現在のようにプリオン説でこの病気が解明されたかのような前提、感染しても発病していなければ安全、種の壁は越えてもたんぱく質であるが故安定的ということで方策を決めていると、それがもしプリオンでなく核酸を持つウィルスのようなものだった場合それが宿主に順応変化し新たな感染を生む可能性も捨てきれません。肉骨粉を与えていると云う事はその機会を病原体に与え続けているということではないでしょうか?
孤発性ヤコブ病は遺伝的な要因で発症すると考えられています。環境的な感染ということを経ず発症するということです。100万人に一人の割合で起きているそうです。
しかし清浄国と言われるオーストラリアニュージーランドの牛、羊にはその程度の感染さえ起きていません。果たして孤発性ヤコブ病は遺伝によるものなのでしょうか?それがもし感染原のない場所で遺伝的に発症するものだとしたら他の場所でも同じように発症するはずです。しかし清浄国の家畜にはそれが起きていません。弧発性ヤコブ病は感染によって起こるもので、遺伝的にヤコブ病に対して感受性の強い方が罹るれっきとしたBSE由来もしくは他の動物の伝達性スポンジ状脳症からのヤコブ病と考えるのがより自然なのではないでしょうか?伝達性スポンジ状脳症では異種族間での感染性が高いということが分かる前の研究において遺伝的とされていた病気なわけです。

このところのBSE研究によると中には特定危険部位という考え方そのものが否定され兼ねないものが含まれています。プリオン説はBSEで死んだ牛の特定危険部位と言われる部分に異常プリオンタンパク質が多く残されているという事実に基づいています。
感染源=異常プリオンタンパク質ということがプリオン説の骨子です。
牛がBSEに感染し死んだ段階で異常プリオンタンパク質が多く残されている部分
これだけが危険でこれさえ取り除けばあとの部位は安全という考え方
しかしその前段階があることが確認されています。
それはマウスによる実験で、伝達性スポンジ状脳症発症の過程に関する研究です、感染力の高さの推移と異常プリオンタンパク質の量の推移には対象としたいくつかの臓器によって少なからずズレが生じるということです。具体的には感染の過程の臨床的な事実を追うとまずリンパ系の臓器に症状が現れ神経系に及び最終的に脳に到達しているという感染の過程で。
つまり最終的に死に至る段階には特定危険部位に症状が顕著に現れ感染性が強く確認されるのですが、その前段階ではリンパ系の臓器唾液腺や脾臓での感染性がより強く、その段階その臓器では異常プリオンは少ないかもしくは認められない、ということが特定危険部位という考え方プリオン説そのものに反し確認され認められているということです。つまり症状を発するのは脳に異常プリオンタンパク質が溜まるということが起き始めてからですから、それ以前発症前の段階においてリンパ系の臓器の方がむしろ感染力を強く有している。こういう可能性は考えられないのでしょうか?私は科学者ではありません、余計な心配なのかもしれません、しかし素直に読んで既存の情報と合わせて考えるとそのような心象は当然得られるものと思います。

色々な対策の場面でBSEの発症とされているのは歩行困難などの症状を示す脳に障害の起きている最終段階のことでその前段階は含まれていません。月齢20歳以下ではBSEは発症しないという研究がありその考え方に基づいてアメリカは全頭検査を無意味として日本政府を説得してしまいました、そもそもこの論理自体が飛躍しています。伝染病の正体がつかめていない現段階で全頭検査は有効な手段です。さらに既に感染して発症していない牛も対象として捉えこれを実施するというのが当たり前の姿勢ではないでしょうか?それができないとか難しいということはあっても、全頭検査そのものが非科学的とするのはいったいどのような考え方なのでしょうか?実際双方の行政の間でそのようなやり取りがされたわけです。理解に苦しみます。

今回の輸入再開で特定危険部位を除いた肉の輸入が認められました。
それは感染している牛でも発症以前は完全に安全であるという考え方に基づいているわけですがそれは確実なのでしょうか?感染して発症する以前の牛のリンパ系臓器及び組織それが混入している食肉にもし感染の危険性があるとしたら今回の基準では甘過ぎるわけです。
発症以前のそれらの部位に感染性があるという研究はマウスのものです。牛には該当しないのかもしれません。
慎重に安全を確かめる姿勢がない以上、このような危険性も考慮されないのでしょう。
これほど未知な部分の多い研究途上である伝染病もプリオンという名を与えられ一気に理解が深まったかのようですが、もしその考え方の根本的な部分に間違いがあったとしたらどうでしょう、実際様々な部分でその可能性が見つけられているそうです。あまりにも時期尚早な認知で政府の対応もこのプリオン説を基に進められています。あくまで危険な可能性が捨てきれないのではないかという話ですがもうすでに私達は実際に選択する場面に立ってしまっています。

食べ物を提供する者としての責任を果たすなら、それがもし宝くじに当たるような確立であったとしても感染の可能性があるものは使うべきではないでしょう。
安全が確認できないものは現段階危険なものです。私は自分の倫理観に沿ってそういった危険な可能性のある食品の仕入れ購入を止める決断をしました。
しかしそれは実際にはかなり難しいことです、吉野家の牛丼を食べないことはとても簡単なことですが、日本では加工食品や外食産業において原材料の産地表示義務はありません。安ければ使うでしょう、企業というシステムに良心は期待できません。
危険なものでも法的に使用可能でそれを使うことによってより利益が上がる、そういう選択がされているのは日常よく見掛けることです。腐らない弁当があればカビない食パン、有機溶剤の注入された肉、市場に出てしまえば色々な場面で使われていくのは確実です。
責任を果たすなら可能性のある全てを排除しなければいけない局面に立たされているわけです。
残念ながらこの国の無責任な方策がこういう状況を生んでしまったわけです。
腹立たしい限りです、今まで使えていた食材が使えなくなってしまう。

過去できるだけBSEに関する情報には目を通してきたつもりですが最近読んだ「プリオン説は本当か」という本には今まで触れる事のなかった情報が多く含まれていました。
実際に現場で研究をしている人の視点で語られていて、リアリティを感じます。当然筆者の主張がありその部分は主観的に表現されていますがそれに至るまでの部分はただ淡々と憶測なく表現されていて読む側の想像を刺激します。

アメリカという資本主義、経済原則を基本とした社会において主要な食品の産業である畜産は大変なボリュームで国の根幹をなしています。それは私達の想像を超えるものでその絶対的な量、そのコストの低さ、従事する人の多さは動かしがたい重さを持っています。おそらくアメリカでは未だにBSEに対し実質的、効果的に取り組むことができていないのでしょう。
BSEの性質(潜伏期間の長さ、感染率の低さ、未知の病気であること)があるが故
アメリカ政府はその強引さでもって安全であると主張し内外にそれを強要しています。中国も輸入再開することを表明しましたし、9月中にはおそらく韓国もアメリカの圧力に屈して輸入再開を決めることになるでしょう。アメリカの産業のために他国の一般市民が犠牲になるかもしれない現実が目の前で進行中です。
BSE、変異型クロイツフェルトヤコブ病の恐さは一端発病してしまえば確実に死にいたるということです。感染率が非常に低い上、実証したり、感染源を特定することが困難ということで危険を無視してしまおうというやり方、憤りを感じます。
科学者でない私が言うのはおかしいかもしれませんが読んだものを総合して考えると、おそらく弧発性ヤコブ病は遺伝的に発症するのではなく遺伝的に感染しやすい人が病原体に触れ感染発症するものなのではないでしょうか?
過去あったそのような弧発性ヤコブ病とされた方も病原体をもらうことがなければ死なずに済んだのかもしれません
どのような遺伝を自分が持っているか大抵の人には分からないわけです。
変異型ヤコブ病にしても実際にBSEが蔓延したとして発病するのはおそらくはごく僅かな人達です。どこでそれが分けられるのか?食べた量によるものか、他の要素が影響するのか未だ研究の途上です。ある程度統計的なデータがまとめられても新しい事実が次々と紹介されるので判断に難しいところです。
それはどのような人たちにとって特に危険なのか?自分かもしれない、身近な人に起こるかもしれない、食べなければそれを防ぐことができるかもしれないわけです。しかし政府は外交的な事情でその脅威を日本の人達に一歩近づけてしまいました。
報道機関は不思議なほど何も表明しませんが、現在大切な局面と思います。
いい機会ですから危険と思われるものは全て排除して、気持ちを切り替えてやり直す心境でことに望みたいと思います。

BSEに関するお勧めサイト
狂牛病とプリオン/牛海綿状脳症(BSE)
http://www2d.biglobe.nejp/~chem_env/chem8/prion.html
BSE&食と感染症 つぶやきブログ
http://blog.goo.ne.jp/infectionkei2
国立感染症研究所
http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k02_g1/k02_24/k02_24.html
農業情報研究所
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/index.html

プリオン説はほんとうか?著者: 福岡伸一
分子生物学者の方が書いた本です。こちらに詳しい記述があります。


Posted by lafreccia at 00:09:36 | from category: メニュー2018年 | DISALLOWED (TrackBack) TrackBacks
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