April 11, 2007

私達が向うところ・続き

「お金に目がくらんで」というと言い方が悪いですが、対価にばかり注目していると、見逃してしまうことがたくさんあります。実際の価値に比べてあまりにも軽視されていることがあります。私達の業界で言えばサーヴィスに関することが、その最たることでしょう。レストランではサーヴィスが最も大切な要素です。私達料理人にとっては料理が一番大切ですが、レストランとして見た時にそれは一つの要素に過ぎません。実に様々な人達がいて、その方達にその店の個性的な出し物を楽しんでもらうわけです。コーディネイトすること自体から難しいことをさらに、和み堪能していただいて、気持ちよく元気になって帰っていただく。その行為自体がレストラン業です。サーヴィスはその最前線で最も影響力があります。
なぜそれほど大切なはずの職業の重要性が認識されていないか?不思議です。日本の文化には欠落した部分があります。経済に偏向して文化を置き去りした一連の政策やアメリカ的な合理主義の影響でしょう。ヨーロッパではレストランのサーヴィスは大切な職業であると当然に認識されています。レストラン自体よりもサーヴィスする人に注目が集まることがあるそうです。その人がお店を変えればお客様もそのまま移動してしまう「彼がサーヴィスを指揮する店は美味いに決まっている」と。
アメリカでボーイ(給仕人)と呼ぶようにフランスでギャルソンと呼ぶと失礼にあたります。ムッシュと呼ぶのが当たり前で、当然ですが彼らはその仕事に誇りを持っています。
文化を大切にする国ではこのような共通の認識があります。日本でも和食ならおかみさん、仲居さん、仲居頭は料理長と同等の権限で給仕の全てを取り仕切る店の要です。しかしこれが洋食になると急に事情が変わってしまう。
レストランのサーヴィスは実に様々な能力が要求される仕事です。店がテーマとすることの専門的な知識はもちろんですが、ハードに関すること、空間のプロデュースと言っていいと思います。それこそ掃除を始めに客席、お客様の環境五感を網羅してコーディネイトする、それに加えて最も難しいことが、対人に関しての精神性、精神的に成熟した人だけが持ちうる奥行き、明かに有能な給仕人の方は人間としてレベルが高いということです。それなのに社会的な評価は低い、日本のレストランのレベルが今一つ上がって行かない最大の原因がここにあります。その価値なりの評価をする見識習慣が実際に社会に育っていない。
このような本来あるべき認識が育っていない、社会のその部分が機能していないということです。まずレストランの機能は何か、ということからその話は始まります。これは社会的に自然な淘汰が起きて改善されていくにはあまりに大きくズレがあり、土壌が整っていない。その間に良い人材、大切なノウハウはどんどん失われてしまいます。
日本における洋のレストランビジネスは大変なボリュームです。ここが少しでも変わっていけば社会に与える影響は大きいと思います。
ラ・フレッチャにできることは、まずはこの方向で店を作り上げ、成功させてその理由を関る人皆さんにわかっていただくことだと思います。モデルというとおこがましい限りですが、私も自分が利用する際にはここのような方向性を持ったお店がいいなと思います。値段のつけ方や料理の程度、接客、店の質、理念根幹となるものが全てを作り、表現されるわけです。商業的なことに捉われて大切な部分を失ってはいけません。


Posted by lafreccia at 18:24:30 | from category: 理想のレストラン | DISALLOWED (TrackBack) TrackBacks
Comments

K太:

きょう、いまは退職されている
女性料理人と食事をしながら
シェフの言われているコトについて
話していました。

レストランという業態は
そこにいる、すべてのひと(お客様含む)
にとってフェアであるべきな
あたりまえで、意外に見落としがちな
鉄則のようなものがあるよね。
という結論になりました。

きっと、それぞれの守備の職域をまもり
かつ、楽しむ姿勢が
よい店になるのでしょう…

いま「かもめ食堂」を観ています。
いいです。
(April 12, 2007 01:30:11)

chef:

k太様
いつもコメント有難うございます。
このブログ内容が重過ぎるせいかあまりコメントいただけないのが残念でした。
色々お話いただけるのも有り難いです。
働く環境が少しでも良くなるように考えていきたいですね〜
(April 13, 2007 00:26:33)

ヤス:

レストランという業種と言うより、飲食店として思うことがあります。
キッチンとホールのバランスの悪さは企業(商売)気質と言うのでしょうか、それが問題のひとつではないでしょうか?
料理人は素材と季節を大切にして、お客様からの(おいしい!)と言う一言が嬉しくその言葉を裏切らないで日々料理に向き合う人で
ホールの方は店にこられたお客様入店からお帰りまで全てにおいて満足していただくように目立つ動きではなくさりげなくサービス
する人ではないでしょうか?
そして私が考える良い店とはお互いの方向性がしっかり一致(お客様)となっていてお互いに信頼している店だと思います。
確かに儲けがないと店は成り立ちませんがお客様が支払われたお金と満足度が同じ、それ以上であることが絶対条件でしょう。こう考えている料理人、サービス人はたくさんいます。ホスピタリティーを求めている会社も今多いですよね。でもなぜか根つかない・・・
お客様も求めてないのかもと思ったりしましたがそうではない・・・・
料理を通じてお客様と接して楽しんでもらうと言った基本の飲食店が少なくなったのが少なくなっているのが一番の原因だと思います。
自分は堅苦しくなく気持ちいい店を常に心がけて、天狗にならず営業に向かいたいと思います。
(April 23, 2007 19:13:47)

chef:

コメント有難うございます。
日本に本来あるべき上質なサーヴィスが定着しないのは、やはり文化的な未熟さがその背景にあると思います。
そのことに気が付いて、しっかり考えていらっしゃる方には、ぜひフロンティアになっていただきたいと思います。それは文化を構築することと言っても過言ではないと思います。
そのためには、まずサーヴィスに重きをおいた質の高いお店をしっかり作り、成功させることが有効だと思います。頑張りましょう!子供達が安心して暮せる街を作る一助になるように。
(April 24, 2007 00:19:46)
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